怪談漫画に登場する『霊道』とは何か
実話怪談の本や女性向けの心霊漫画がお好きな方にとって、「霊道(れいどう)」という言葉はすでにお馴染みかもしれません。オカルト漫画の主人公として設定されている女性霊能者が、「一連の怪奇現象の原因は、この部屋に霊道が通っているためです!」と指摘し、念のパワーによって道の流れを逸らして事件を解決するというシーンは、その手のジャンルでは定番パターンのひとつになっています。しかし霊道とは具体的にいかなるものかと問われても、答えられる人はなかなかいないのではないでしょうか。
霊道とは読んで字の如く、霊の通り道という意味合いの言葉です。しかし、ではなぜ霊が広い空間内の特定の線上のみに偏在・滞留してしまうのか。あるいはそれほど強力なエネルギーの流れが、果たして霊能者個人の念力だけで変化させられるものなのか。私はあいにく寡聞にして、そうした基本的な疑問に対してきちんと回答している文章を今まで目にしたことがありません。
そこで今回はこの場を借りまして、霊道の正体とその仕組みについて簡単に書かせていただきます。
霊道は天国へ上る道筋ではない
まず霊道を「霊が成仏へと至る通り道」と定義している霊能者がいるようですが、この認識は完全に誤りです。そもそも成仏とは、人間が肉体の殻を脱ぎ捨てて霊界次元へ意識移行する現象を指します。通常は肉体と重なった幽体(エーテル体)の瓦解期を含めてごく短期間に起きるもので、仏教ではその期間はおよそ49日間と定められています。肉体の死を迎えた意識生命体は、必ずこの過程を経て霊界次元へ突入するわけですが、その際に現実空間の特定ラインを移動しながら霊の世界へ上昇して行くわけではありません。段階を経つつも、最終的な成仏は瞬時に起こるのです。こうした誤解が生じてしまったのは、恐らくキリスト教系の教典に描かれているような天国へ昇天していくイメージを、そこへ重ね合わせてしまったからだと思われます。
では成仏への道筋でないとしたら、それは一体何なのか。一言で言えば、霊道とは我々が住む三次元の位相に生じた時空の歪みの連続点であると定義できます。つまり霊道と呼ばれるポイントないしはライン全体においては、何らかの理由で三次元空間に亀裂が生じており、四次元以上の高位の異次元空間(霊界)が相互流入する形で浸潤しているのです。そうなると当然、その一帯では俗に言う心霊現象が起きやすくなるというわけです。次元を歪ませる原因の筆頭に挙げられるのは電磁波の異常によるもので、自然界で霊道現象が起きるケースでは主に地磁気の乱れが深く関与していると言われています。
それは不成仏霊を引き寄せて捕らえるハエ取り紙のようなもの
繰り返しになりますが、霊能者が霊道として感知する特定のスポットやラインには、ほぼ必ずといって良いほど電磁気の異常上昇が認められるのです。例えば問題の土地部分に活断層など地層深部の亀裂があり、大量の地磁気が地上へ放出されている。あるいは周囲に発電施設や特殊な工場など高圧電流を扱う施設が網状に点在しており、それらの点と点を結ぶグリッドの線内に該当地域が入っているなど、具体的な形成要因はいくつかあります。そうしてそうした場所では、成仏に至らない霊幽体や真我を失った幽体の抜け殻などが大量に引き寄せられるということが起きやすくなるのです。物質世界と隣接した幽界(エーテル体世界)をさまよう霊が、次元の亀裂周辺で局所的に発生している霊界以上の振動数を、霊界そのものであると錯覚して同調してしまうためです。
さらにいったん集積した霊の群れは、容易にその位相から移動できなくなります。これは地球上に生息する生物が終生、重力の支配から逃れられないのと似た道理です。人間が道具を使わずに跳躍できる高さは、肉体を鍛え上げたスポーツ選手でも2~3メートルが限界と言われています。そして一瞬、空中に浮かんでもすぐにまた重力によって地面へ引き戻されます。霊道へ取り込まれてしまった霊体も、これと同じような状況に陥ってしまうのです。また、たとえ時間経過などに伴って霊体意識の本体が解放(成仏)に至ってもその幽体の殻は残り続けるので、同地域での心霊現象が止むことはありません。霊道とは、言わば一度捕らえたハエを絶対に逃さないハエ取り紙のように厄介な代物です。
霊道が関わっていた相談例
直近で恵心に寄せられた、霊道がらみの相談実例をご紹介いたします。
千葉県にお住まいの川崎紀子さん(仮名)37歳より
昨年、都内から千葉県へ転居したのですが、それを機にマンション内で頻繁に金縛りに遭い、同時に霊らしき存在を目撃するようになりました。出現する霊は何体もいて、男女性別もバラバラです。この間は夫婦の寝室で夫と就寝中、2人同時に金縛り状態となってしまい、その時に額から血を流した髪の長い女がいきなりクローゼット付近から現れ、枕許をグルグルと回って私を睨みつけた後、南に面した壁を通り抜けて消えていきました。
その体験があまりにも恐ろしかったので後日、プロの祈祷師に連絡してお祓いをお願いしたところ、「マンションを北から南へ貫通する形で霊道が通っている。祈祷で防いでも一時的な措置に過ぎないので、できるだけ早く引っ越した方が良い」と言われてしまいました。金銭的な事情があって、短期間に2度の引っ越しをするのはとても無理です。何とかしてもうしばらく、このマンションに住み続けることはできないでしょうか。何卒、宜しくお願いします。
こうした相談を受けてさっそく問題の建物を拝見したところ、先の祈祷師が指摘した通り、そこにはごく小規模の霊道が存在していました。なお、その発生原因は建物直下を南北に走っている断層から来る地磁気の乱れであると判明。「根本的に取り除くのは不可能です」と申し上げた上で、とりあえず念の操作によって一時的な緩衝地帯(結界)を作り上げ、室内に流れ込んでくる強い霊波動を防ぐという処置を施しました。
巷の霊能者たちはよく「霊道をずらす」という表現をしますが、実際にはこのように念を練り上げてバリアを形成するに過ぎません。要するに対症療法しかできないのです。また、こうした結界の耐久時間は長くても半年から1年前後なので、それが過ぎる前に結界を張り直すという追加作業が必要となります。
この相談者のケースでは、2度目の結界の張り直しを前にした今年の夏、無事に引っ越しが完了して解決となりましたが、今でもそのマンションは何かと噂が多い心霊物件として有名だそうです。
最後にもう一度、霊道について箇条書きにまとめます。
- 霊道の発生原因の大半は、自然界もしくは人工物に由来する電磁気の異常である。
- そこは霊の通り道というよりは、むしろ牢獄に近い。
- 発生原因となる電磁気異常が鎮まると、霊道も自然に消滅する。ただし人為的に消し去るのは非常に難しい。自然界由来(地磁気の乱れ)の場合は完全に不可能。